すでに作業は始まっており、古風な定食屋が解体されつつあった
すでに作業は始まっており、古風な定食屋が解体されつつあった


桜丘町は渋谷の中では比較的落ち着いた空気のエリアで、専門学校や小規模な教室が目立つ。ダンスにバーテンダー、果ては小料理の教室の看板まで見ることができ、東京のナイトカルチャーを陰ながら支えていた土地だと感じさせる。ほかにもスナック、バー、
雑貨屋に劇団と様々なテナントの看板が足跡を残していた。渋谷らしい落書きもあいまって、猥雑ながら都会のエネルギーが息づくかのような街並みだが、皆消えていく。JRのホームからも見えるこの光景は渋谷らしさを感じさせるものだった。

主を失った雑居ビルがあまた。多種多様な看板が興味深い
主を失った雑居ビルがあまた。多種多様な看板が興味深い


落書きもビルと一緒に姿を消す
落書きもビルと一緒に姿を消す


通り一つ、建物一つ隔てただけの開発区域外と街並みは全く変わらず、その区域外では普通に老若男女が建物に出入りしている。ロープやフェンスで仕切られただけで建物の行く末が全く変わってしまうのも、不条理というか「ベルリンの壁」のようなものを連想してしまう。

塀の右側が再開発エリアだが、左側では人が出入りする平凡な日常になっている
塀の右側が再開発エリアだが、左側では人が出入りする平凡な日常になっている


渋谷駅方面に歩く人の横でも解体作業が
渋谷駅方面に歩く人の横でも解体作業が


再開発事業は2023年に完了するとのことだが、一体どんな景観が出現するのか。そのヒントはJRの線路を挟んだ東側にある。こちらには旧東急東横線高架の跡地を活用した複合施設「渋谷ストリーム」が18年9月に開業している。同じ東急不動産が東急電鉄と共に開発・開業させた施設である。

渋谷ストリームの一角。右手のビルは再開発されずに残ったもの
渋谷ストリームの一角。右手のビルは再開発されずに残ったもの


渋谷川を整備し、高さ180メートルのビルと商業施設を入居させた大規模な再生事業だが、今時のよくある複合ビルディングという印象は拭えない。一方、至近には開発区域に入らなかった雑居ビルが立ち並ぶエリアが残っており、両者の景観の差異が際立つ。

計画が完成すれば、先刻記録した雑多で猥雑なビル群も、現代的かつ金属的で無機質なビル群に変貌するのだろう。渋谷ストリーム周辺と同様の光景が現れると思われる。さらにこの区域の西側に隣接するエリアも「ネクスト渋谷桜丘地区」として再開発計画が策定されている。

渋谷駅西口から見る光景。再開発が進めばこの景観は一変する
渋谷駅西口から見る光景。再開発が進めばこの景観は一変する


今、桜丘町に限らず渋谷は各所で再開発の真っただ中で、クレーンの槌音が響いている。大きな転換期にあるこの街の日常は、こんな風にして変わっていくのだろう。今回は広範囲な開発だったため話題になっていたが、もっと小さな形で消えていく古き渋谷の情景も記憶にとどめておきたい。
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Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)