「あの時、萌景ちゃんが出していたSOS信号に気付いてあげられなかったことで、今でも自分を責めているし、後悔もしています」
萌景さんは自殺する前日の3月20日の夜、親友を訪ねてA子さんの家に泊まりに来ていた。萌景さんはA子さんの自宅の外で事務所の社長と長電話をしていたという。
A子さんは5月時点でこう話していた。「萌景ちゃんが悩んでいたのは、学校のことと、社長さんのこと。それと『1億円払え』と言われたことだと思います。
その夜、萌景ちゃんから聞いたのは、『謝らされた、私は何も悪いことしていないのに謝らされた』『なんで私が謝らないかんの? 本当に社長に裏切られた』という言葉でした」
その夜、萌景さんは詳しくは理由を言わなかった。しかし、翌日、学校説明会へA子さんが萌景さんと自分の子供をマイカーで送っていく最中、
車の中で萌景さんは話を始めたという。A子さんはその内容に驚き、車を停めて、話を聞いた。
「萌景ちゃんは『騙された。(アイドル活動のために費やした)2年間を返して欲しい』と言っていました。『社長に裏切られた』と言った後、
社長さんに『1億円を払えと言われた』と聞きました。夜遅くに社長さんと外で話している時にそういう風に言われたというのです。
車を停めて後部座席を見ると、(萌景さんは)かなり怒っていました。何度も何度も『裏切られた』と言って、『社長とちゃんと話をしないといけない』とも言っていました。
だから『1億円って、どういうお金なんだろうね』と私が聞いたんですけど、(萌景さんは)黙って下を向いていました。
私は『そんなお金なんて払わなくていいよ。お金は天下の回りものって言うやろ。せやから、そんなの気にしなくていいからね』と言ったんです。
けど、その時も下を向いていましたし、また『裏切られた』と何度も何度も言っていた。その日は、学校の説明会の日だったのでよく覚えています。
間違いありません。(萌景さんが)嘘をつくような状況じゃないと思います」これが、萌景さんが自殺した当日朝の出来事である。
10月12日、萌景さんの遺族は、自殺は事務所による過重労働やパワハラなどが原因として、元所属事務所「hプロジェクト株式会社」の社長らに対し、
慰謝料など約9200万円の損害賠償を求める訴訟を松山地裁に起こした。かたや、同社の代表取締役社長・佐々木貴浩氏は長時間労働は認め1億円は否定