実名で証言することを決意したのは、中村一也氏(35)だ。(初出:週刊文春2023年6月8日号/年齢・肩書きは当時のまま。一部、本文を加筆・修正しています)

中村氏はジャニーズJr.が多数出演していた『8時だJ』(テレビ朝日系)を観て、テレビに出ることに憧れた。滝沢秀明や今井翼、山下智久など、ジュニア人気が最高潮の時代だった。母が履歴書を送り、中学1年だった01年1月、事務所からいきなりダンスレッスンに呼ばれた。そこからジュニアとしての活動が始まる。

「毎週末にレッスンがあって、週を重ねていくごとにA、B、C、Dとグループ分けされて、上のAとかBまでいくと『ザ少年倶楽部』(BSプレミアム)にバックとして出られるんです。レッスン前日とかに必ず連絡があって、呼ばれてないと切られたんだ、となる」

 レッスンは渋谷のNHKの709リハーサル室で行われ、当時69歳のジャニー氏の姿もあった。ジュニアたちは昼食時になると、ジャニー氏から1000円札を受け取り、NHK内の食堂に駆け込むのが常だった。

「普通のちっちゃいおじいちゃんという感じでした」

 あるとき、レッスン終わりにジャニー氏に声をかけられた。当時、六本木にあったジャニー氏の自宅マンションに呼ばれたのだった。

「〇〇や△△が泊まりに来るけど、ユー、来る?」

合宿所と呼ばれるマンションに連れて行かれると、今ではデビューしているジュニアたちもいた。
「自分としては、ジュニアの子たちとみんなで、わいわい泊まりに行くぐらいの感覚でした。あと、叙々苑の焼肉弁当が出るんですよ。何千円もするような。それが楽しみで行ってました」

 2、3度自宅に行った後、被害に遭ったのは、02年10月19日。日付がはっきりしているのは、この日、東京ドームでタッキー&翼のデビューを記念したコンサートがあったからだ。

 中村氏も出演し、翌日も同じ公演があったため、ジャニー氏の自宅に泊まることになった。その日は5人ほどが泊まっていたと記憶しているという。寝室で3人のジュニアと並んで寝ていた。中村氏は真ん中だった。その深夜のこと。
「女の子にやられているっていうのを想像して…」

「足元のほうから布団に入ってきて、すぐジャニーさんとわかりました。もう怖くて動けない。マッサージをされていたのかわからないですけど、(性器を)しゃぶられて……。自分のおじいちゃんみたいな親しみもあったので、そのショックもありました。やられてる最中は、女の子にやられているっていうのを想像して、頼むから終わってくれって。結構長かった気がします。30分くらいの感覚でした」

 翌朝、ジャニー氏と他のジュニアと朝食を食べていた時だった。

「テーブルの下で、足の甲を、足でさすられたんです。それがまたゾッとした」

 タクシーでドームに到着したとき、他のジュニアが会場入りする中、彼はジャニー氏に呼び止められた。

「1万か2万を手渡されました。『いらないよ』って断ったけど、『あげる』って言われて受け取った記憶があります」
 前夜の出来事は、コンサートの時間を迎えても、重くのしかかっていた。