からいかに俺たちの学校出身者が温室で世間知らずで社会での競争に追い付けないのが分かっ
ているからこっちには呼ばなかった。そっちの社員は日本人 7 割、欧米人 3 割だろう。東京のデイ
ーリングは欧米人 95%だよ。アジア系は 4 人だよ。黒人は 1 人もいないんだよ。この意味分かる
か?」
渋谷、「分かりません」
今田、「典型的な白人閉鎖社会だってことだあ。それもアジア嫌いな欧米人の集まりだよ。そんな
中で働きたいか?目に見える、見えないいじめはあるから。渋谷はそんな環境は向かないと思っ
ての先輩心から不動産に推薦したんだよ。ゴールドマンの不動産部門は中々入社出来んぞッ。渋
谷は英語しゃべるのか?」
渋谷、「少しなら・・・」
今田、「日本株のセールス部隊では話せない営業マンもいるけどそれはそれで辛いぞ。会議に出
ても発言も出来ないし。じゃあ、渋谷は TOEIC L&R スコアーいくつ?」
渋谷、「880 です」
今田、「ダメダね。990 とは言わないけど 940 以上は必要だよ。履歴書でね」
渋谷、(沈黙)
今田、「じゃあ、これから質問を 1 つする。答えは Yes か No だ」
渋谷、「はい」
今田、「渋谷が Yes と言い切ったら俺のボスに渋谷を推薦してアシスタント見習いで雇ってもらう。
同じグループ内での引き抜きは少しもめるけど気にしなくて良いよ」
渋谷、「はい」
今田、「じゃあ、渋谷は何を賭ける?」
渋谷、「賭ける?」
今田、「そう、何を賭けるかだ。俺の質問で渋谷が No と言った時その賭けを没収する物だよ」
渋谷、「お金・・・」
今田、「馬鹿野郎、そんな薄っぺらな気持ちなのか?金なんか賭けてもしょうがないだろう」
渋谷、(沈黙)
今田、「じゃあ、No の場合には金輪際ディーラーになりたいと言うな。夢も見るな。この場で諦めろ。
今の仕事を邁進しろ。それを賭けようや。どうだ」
渋谷、「(小声で)はい」
今田、「じゃあ、質問するぞ。先週の金融日の出来事だよ。いいか」
金曜日午後 1 時過ぎ
ディーリングルーム
アシスタント、「今田さん、日本株セールス長藤田さんと日本株部長牧野さんがボスに頭下げてい
ます」
今田、「あっあ--。何か今日あったけ?」