「会社にダメージになるものは抑える。司直の手が入っても証拠さえなければ大丈夫だといわれた」−−。サラ金大手「武富士」に十四日、ついに盗聴という犯罪容疑で捜査が入りました。日本経団連に加盟する上場企業。同日逮捕された同社元法務課長(渉外担当)は、同社と武井保雄会長への批判封じ込めや敵対者監視のため、「合法非合法を問わない」対応に走っていたと法廷で語っています。


盗聴は、元法務課長の中川一博容疑者が法廷で「会長指示で違法な電話盗聴にかかわった」と自白したことで、一気に表面化しました。
 陳述によると、同容疑者がかかわって最初に盗聴したのは同社常務執行役員。「武富士や武井健晃本部長(会長の二男)を批判するホームページの首謀者と疑った」(中川容疑者)といいます。さらに、ホームページ作成者の社員、つづいて暴行した本社社員を刑事告訴した元支店長が盗聴の対象者にされました。
 二〇〇〇年秋には武富士の株価が暴落。これを雑誌記事が原因だと考えた同社は、執筆者と見たジャーナリストの山岡俊介氏の調査を開始。複数の元社員によると、経歴調査や尾行、取材の様子を盗み聞くなどして、情報源や人間関係のチャート図も作成していました。盗聴もこの調査の一環だったといいます。
 複数の元社員によると、武富士は株価に影響を与える記事に敏感で、情報誌記者への調査を日常的に実施していました。さらにジャーナリスト二人が盗聴されました。一人は通話記録がありませんでした。
 「(武富士では)武井会長を批判、敵対する人間は在職中、退職後にかかわらず動向を確認する」と同容疑者はのべています。批判が生まれる土壌は、武富士自身にあったといえます。