武富士会長を逮捕
盗聴指示した疑い
実行者への報酬 決裁印

サラ金最大手「武富士」をめぐる盗聴事件で、警視庁捜査二課は二日、同社を創業した会長の武井保雄容疑者(73)=東京・杉並区=を電気通信事業法違反(盗聴)の疑いで逮捕しました。事件は日本経団連に加盟する東証一部上場企業のトップが盗聴で逮捕されるという前代未聞の事態に発展しました。
 調べによると、武井容疑者は二○○○年十二月から○一年二月の間、同社元法務部課長中川一博容疑者(42)=同法違反容疑で逮捕=に指示し、アーク横浜探偵局代表重村和男容疑者(57)ら探偵業者三人=同=を使い、世田谷区内に住んでいたフリージャーナリスト(44)宅の電話を盗聴した疑い。
 同課は、盗聴を実行した探偵事務所への調査費支払いを決める武富士の稟議(りんぎ)書のコピーを押収。その中には、武井会長の決裁印が押されたものもありました。
 中川容疑者は「武井会長の指示で、武富士に批判的なジャーナリストら六人を盗聴した」と供述。別の事件の公判などでは「会長と私の間では、盗聴について社内で公にしないよう『耳の件』という隠語を使った。盗聴テープを会長室で会長と私の二人だけで聞いた」と陳述していました。
 武井容疑者は、米経済誌が発表する「世界長者番付」で、一九九九年、二〇〇一年と二回にわたって日本人トップ。資産は約一兆円にものぼります。
 武富士は一九九八年に東証一部に上場。昨年、武富士被害対策全国会議の弁護士らが慎重な審議を要求したにもかかわらず、日本経団連にも加盟が認められました。
 武井容疑者は八二年から二十年以上にわたり同社会長を務め、大銀行から低利で調達した資金を利息制限法を超える違法な高金利で貸し付け、貸付額を急速に拡大。社員に過大なノルマを課して、〇二年度には、申告所得十一位と、大銀行をはるかに引き離す利益をあげました。
 調べに対し武井容疑者は「盗聴にかかわっていない」と容疑を否認しました。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-12-03/01_01.html