10月14日午後1時半、千葉地裁802号法廷では、才津被告の初公判が開かれた。
黒いパーカーを羽織った才津被告は、ジャージパンツから下着がはみ出た状態で出廷した。右手親指と目尻には、小さなタトゥーを入れている。
証言台に立って起訴事実について問われると、
「(間違い)ないです」
 と小声で認めた。

 検察側は論告で「不安な日々を送る被害者に理不尽なメッセージを送りつけた」などと指摘し、懲役6月を求刑した。
 最後に才津被告は「父親として情け無い。被害者の気持ちが身に沁みて分かった。当たり前ですが、被害者には二度と関わらない」などと謝罪し、結審した。

 公判終了後、傍聴席を立った私は後ろを振り返ると、黄色いスカートを履いた、陰鬱な雰囲気をまとった中年女性が、私のほうをじっと睨みつけてきた。そのまま無視して退廷したが、あの不気味な細い目が、いつまでも脳裏に焼き付いて離れなかった。
同日にアップされた「怨霊の憑依」のブログをのぞいてみると、匿名のコメントで「才津さんの件」と題する投稿があった。
〈傍聴しました。M谷氏らしき人は、被告人スケッチもしていました。終了後、傍聴人2人と挨拶を交わしていました〉
投稿時間をみると、同日午後2時35分。公判終了直後に書き込んでおり、その内容から、私の後ろに座っていた、あの中年女性と同一人物とみられる。
私を睨み付けるということは、「野上信者」の1人なのだろうか。
奇しくもこの翌15日、野上の逮捕が報じられた。1年間にわたって誹謗中傷を受け続けてきたとも子さんは、ホッとした様子でこう語った。
「あのブログは、すべての誹謗中傷の大本。あることないこと、ひどいことを書かれた。私だけではなく、家族や支援者も誹謗中傷され、本当に苦しかったので、逮捕されて安心している。今後、この件に関して余計な心配や時間を使う必要がなくなり、美咲の捜索に専念できます」

一方、ブログには、「霊媒師」こと野上へのコメントが相次いだ。
〈心が苦しいです。霊媒師様を静かに待ちます。日本の警察は信用できると信じたいです〉
〈霊媒師は、このまま終わる人ではありません。─中略─あれほど正義感が強く生命力に溢れた人を他に知りません〉
〈マスコミは信じられない。警察も。日本はどうなるのか。怒りしかない〉

 野上が逮捕されても尚、一部の間で野上への「信仰心」は続いているようで、SNS世界の恐ろしいまでの現実が垣間見えた。
 野上の裁判を傍聴する際、私はボディガードをつけていった方が良いのだろうか。

(取材・文/水谷竹秀)

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