ウイルスでがん細胞を破壊―腫瘍溶解性ウイルス 日本企業の開発動向
2018/04/11
ウイルスを使ってがん細胞を攻撃する「腫瘍溶解性ウイルス」の開発が活発化しています。
日本企業では第一三共やタカラバイオ、オンコリスバイオファーマが開発を進めており、
アステラス製薬も鳥取大とライセンス契約を結びました。
2018年度中の商業化を目指す企業もあり、新たながん治療が近く臨床の現場に登場することになりそうです。
100年以上前からあるアイデア
腫瘍溶解性ウイルスとは、がん細胞に感染してがんを破壊するウイルスのこと。
遺伝子改変によって、がん細胞の中だけで特異的に増殖するようデザインされており、
正常細胞を傷つけることはなく、正常細胞での副作用は少ないと考えられています。
さらに、患者自身の腫瘍免疫を増強する効果も期待されています。
がん細胞はもともと、正常細胞に比べてウイルスに対する防御力が低いとされています。
過去にも、狂犬病ワクチンを投与した子宮頸がん患者の腫瘍が縮小したり、はしかに感染した
子どものリンパ腫が消失したりといった報告があり、ウイルスを使ってがんを
叩くアイデア自体は100年以上前からありました。
従来はウイルスの動きをコントロールすることができず、治療法としては確立されていませんでした。
しかし近年、遺伝子改変の技術が発達したことで、正常細胞を傷つけずにがん細胞だけで
増殖するウイルスを作れるようになってきました。
2015年には、米アムジェンがヘルペスウイルスに遺伝子改変を加えて開発した
「IMLYGIC」(talimogene laherparepvec)が、世界初のウイルス療法剤として
メラノーマ(悪性黒色腫)を対象に米国で承認を取得しました。
米国立衛生研究所(NIH)が運営する臨床試験データベース「ClinicalTrials.gov」
でOncolytic Virus(腫瘍溶解性ウイルス)と検索すると、世界各地で行われて
いる臨床試験が74件ヒットします(18年4月9日現在)。
大手にベンチャーそしてアカデミアが入り乱れ、開発が活発化しています。