第一章 
■「男は度胸、女は愛嬌」は男女の天分を表すもの

その他では、戦前の日本人には「男は度胸」「女は愛嬌」という言葉があった。
これは皆様も欧文に翻訳する時困った経験をお持ちであろうと思う。
この「度胸」「愛嬌」に相当する欧米語が見当たらないからである。しかしこれは当然のことである。

何故なら、この両者は欧米人の男女とももち合わせていないのであるから。
これは全くすばらしいものであると思う。男女の天分の顕著な発露であり、
人間を最も個性的に飾るものとして、例のないパーソナリティである。

男の「度胸」という点で、戦争中、「アメリカ兵は白兵戦になると赤ん坊のように声を上げて泣きだすのだ」
と聞かされた銃後の日本人は、キョトンとして信じられないといった表情だったのだ。
まさかいくらなんでも、兵隊たるもの、戦地で泣き出すなんて大げさな話だろうと考えたのである。

これは、当時の日本人なら無理からぬ話である。
然るにである、これは全くの事実なのである。つまり、アメリカ兵には「男の度胸」というものが備わっていない。
「女の愛嬌」の問題にしても、戦前外遊した人々は欧米の女性に愛嬌がないという点を指摘していたものである。
これは無論、今日でも変わらない。