★民営化を渋る自治体の鼻先にニンジンをぶらさげよ
2018年5月、企業に公共水道の運営権を持たせるPFI法を促進する法律が可決する。
まずは自治体が水道民営化しやすいよう、企業に運営権を売った自治体は、地方債の元本一括繰り上げ返済の際、利息が最大全額免除されるようにした。
日本の自治体はどこも財政難だ。

借金返済軽減という特典がついてくるなら、今後は積極的に水道民営化を選ぶだろう。
その際自治体と企業がスピーディに契約できるよう、今までの面倒なステップもなくし、ごく簡単な手続きだけでOKにする。
「水道料金」は、厚生省の許可がなくても、届けさせ出せば企業が変更できるようにした。
実は日本の水道が電気と同じ「原価総括方式」であることは、あまり知られていない。

水道設備の更新費用のみならず、株主や役員への報酬、法人税や内部留保なども全て「水道料金」に上乗せできる。
人口が年々減っているのに、今もダム建設が止まらず水道料金が上がり続けるのはこのためだ(電気料金は2020年で総括原価方式を廃止予定)。

料金については自治体が「上限を設定できる」ことになっているが、これについては企業側が心配する必要はないだろう。
水道はその地域を1社が独占できるため、値上げ交渉では企業が圧倒的に有利になるからだ。
設備投資の回収や維持費など、あれこれ理由をつけて値上げの正当性を訴えれば、他に選択肢のない自治体はノーと言えなくなる。

口うるさい議会の反対で足を引っ張られた大阪市の二の舞にならぬよう、「上下水道や公共施設の運営権を民間に売る際は、地方議会の承認不要」
という特例もしっかりと法律に盛り込まれた。
これで水道の運営権を売買する際、議会は手出しできなくなる。

ウォール街の投資家たちは大満足だった。
日本の水道運営権は、巨額の手数料が動く優良投資商品になるだろう。
何よりも素晴らしいのは、災害時に水道管が壊れた場合の修復も、国民への水の安定供給も、どちらも運営する企業でなく、自治体が責任を負うことになったことだ。

日本の法律では、電気やガスは「電気事業法」「ガス事業法」という法律のおかげで、ガスや電気の安定供給の責任はしっかり事業者に課せられている。
だが水道だけは「水道事業法」が存在しないのだ。