https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200403-00000095-spnannex-base
【内田雅也の追球】心の健康を守る「文化」――非常時に思うプロ野球の理念

>日本でも同じことが言える。関西なら「昨日の阪神は……」があいさつ代わりである。
ファンはチームとともに戦い、「虎エコノミスト」の異名を持つ元りそな総合研究所会長、国定浩一は「阪神ファンは観戦でなく参戦」とうまいこと言う。そんな日常が失われて久しい。

 やはり、プロ野球は「文化的公共財」なのだ。

 かつての野球協約第3条(協約の目的)にあったこの文言はいま、日本野球機構(NPB)定款に残っている。
第3条(目的)に<この法人は、わが国における野球水準を高め、野球が社会の文化的公共財であることを認識し……日本の繁栄と国際親善に貢献することを目的とする>とある。いわば理念である。

 野球協約改定を進めた元コミッショナー(当時コミッショナー代行)の根来泰周(故人)が自らパソコンを打って作成し、
2008年1月21日の実行委員会で配布した定款の改正素案には、さらに<豊かな人間性を涵養(かんよう)する><国民に公正にして感動を与える野球を提供する>とまで記されていた。

>プロ野球はいま、国民に<人間性の涵養>も<感動>も与えられず、<文化的公共財>としての役割も失い、<目的>を果たせずにいる。

 同じく、新型コロナウイルスによって文化イベントが相次ぐ中止となるドイツで、文化相モニカ・グリュッタースが発した「文化は良き時代ににおいてのみ享受されるぜいたく品ではない」という談話が目を引く。
3月24日の政府発表文書にあり、救済措置や支援を約束している。「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ。特に今は」

 疫病から体を守るだけではなく、心の健康のためにも、音楽や演劇や小説や……そして野球が必要なのだ。