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【体罰の呪縛】「殺すぞ」忘れられない恐怖心と痛み 部活指導者の暴力はなぜなくならないのか

>「痛めつけられた時の感覚、感情はきっと一生忘れない」

 高校1年の冬だった。部員全員で輪になってバットを振り込んでいると、ゴツンと背中に衝撃を受けた。足元に硬球が転がる。振り返ると鬼の形相の指導者がいた。

予兆は数カ月前からあった。甲子園への切符を懸けた夏の大会直前。練習の緊張感が高まる中、指導者からの「当たり」が強くなった。練習から外され、罵声を浴びせられた。
心当たりがなく、反応に戸惑うと、指導者がさらにいら立った。「文句があるなら言ってみろ」。拳で打ちのめされた。

「一緒に甲子園を目指そう」。中学3年の夏、進路を決めあぐねていた飯田さんに甘い言葉をささやいたのも、この指導者だった。当時通っていた野球クラブの監督が、高校野球部の指導者に転身するのを機にスカウトされた。
言葉遣いは荒かったが、週末は選手たちを自宅に泊めるなど面倒見も良く、熱心な指導は保護者から信頼を集めていた。

 そして高校進学。憧れの甲子園出場を目標に、大好きな野球に浸るはずだったグラウンドで、この指導者から屈辱と苦痛を味わわされた。

 「好きな野球を諦めたくない」。練習を外され、ボールを投げつけられても、沈む心を奮い立たせ、グラウンドに足を運び続けた。だが、1年目の年が明けたころ、限界を超えた。指導者から決定的な言葉を浴びせられた。

 「殺すぞ」

 その日は必死に練習に食らいついた。寮の部屋に戻ると、張り詰めていた糸がぷつんと切れた。気付けばスマートフォンを手に、涙ながらに母に電話を掛けていた。

 「俺、このままじゃ死んじゃうかも」

 1年時から背番号を授かっていた有望株は、在籍1年を待たずに退部、そして退学した。「いくら考えても殴られた理由は分かりません」。胸に焼き付いたわだかまり、そして怒りは、これからも消えることはないだろう。