★金本には“赤い糸”を感じた

 ノリと違い、星野監督は金本には“赤い糸”を感じた。

 「交渉の中で、“ねんざなんかは公傷じゃないです”と言いよったんや。そう言い切れるなんて大したモンや。今の阪神に最も欠けている部分を持っている選手やと思ったな」

 水面下で数回、会談したが、金銭面での要求は一切ナシ。純粋に広島か阪神かで悩んでいただけに、余計に苦労した。

 「オレは阪神に来て野球観が変わった。でも後悔はしていない。お前も、思い切って、飛び込んでこい」が最後の殺し文句だった。

★現場、球団、本社の一体感が生んだ優勝

 昨年オフは、広島・金本、近鉄・中村、ヤクルト・ペタジーニとのトリプル交渉が、最大の関心事だった。

電鉄本社から用意された資金は約20億円。久万オーナーから、「好きなように使いなはれ」と全権を委任されたが、電鉄本社の役員のひと言も忘れられないという。

 「古き良き時代の猛虎打線を復活させてください。昔の強い阪神に戻してください。われわれも協力します、といわれてな。ものすごくうれしかったな」

 3人との交渉は『1勝2敗』に終わったが、金本の活躍で、リーグ制覇。現場、球団、本社の一体感が生んだ優勝だった。