青年期ガンモ役のイ・ボムスさんは昭和時代の勤労青年みたいな苦労人の、
味のある顔をしている。
青年期ソンモ役のパク・サンミンさんは悪役が全く似合わないと思う。
ベビーフェイスすぎて無理してるとしか思えない。「将軍の息子」とかやってると聞いたけど。
何より、このドラマを盛り立てているのがヒール役、つまり悪役のチョ・ピリョン役のチョン・ボソクさん。
この人のサングラス姿はまさに韓国軍の汚い将校のイメージぴったり。
予告編を見て一番強烈に印象に残っていたのがこのチョ・ピリョンの巨悪さ。
米軍基地の燃料タンクが爆発したり、人を撃ったりしてるところを見て
こんな巨悪のイメージを持つ人は久しぶりに見て、絶対にジャイアントを見てやろうと決めた。
全部見終わっての感想は、ラストの話を第一話にもってくるというやり方は
意外だったけど、このときに出てきた白髪だらけで銃をビルの屋上で自分に突きつけていたのが
あのチョ・ピリョンだとわかって、演じてたボソクさんの演技に驚いた。
悪役がすごくはまっていたのでドラマ全体が緊張感を持続できたと思う。
ジョンシク役の人はまるで毎回関西の漫才師のようなファッションで登場して、
最初はエキセントリックだと思ったけれど、これもキャラクターを強烈に立てて
役柄のコントラストを出すためだと考え直した。
この人の「口の形による演技」はものすごかった。
口のかたちでくやしさを表現させたら一流の役者。この人がまさか「馬医」の主人公だとは!

ジャイアントは韓国現代史の暗部を1970年代から江南の経済開発と絡めて
タブーを表現していることがものすごいと思った。
民主化運動の起点となったソウル大学学生の拷問致死事件までドラマに出てきて、
それが実話だったと知ったら恐ろしくなった。
ミジュの子役は本当にかわいかった。
ソンモはガンモとミジュ、お母さんたちを逃すために追っ手を引き付け、
列車から飛び降りて意識不明になってから米軍基地に匿われたわけだけど、
このころからホームドラマじゃなくて、スパイアクションドラマみたいになっていった。
アメリカ軍人と韓国軍との、欺瞞的な関係、双方を信用していないところから生まれる緊張感、
盗聴器をつけさせられてチョ・ピリョンに協力させられたり、
最後はピリョン側についたけど、あそこのやり取りの話はすごく興奮した。
こういうのは日本のドラマではできないだろう。
だって軍人が何もかもやりたい放題の時代を日本はずっと前に終わらせられた。
不幸なことだけれど、韓国ドラマには危険な時代の匂いと影がつきまとう。
それが面白さの源流となっているから皮肉。