Q.突然ですが、なぜ4次元だけ異種ユークリッド空間が、しかも沢山存在するのでしょう?

A.4次元だけが異常に「異種(exotic)なユークリッド空間」をたくさん持っている理由は、
実は微分トポロジーにおける**「低次元すぎず・高次元すぎない中間ゾーン」**という特殊な立ち位置が原因です。

簡単にまとめると、次の3段階の理由でこうなっています。

1.次元が4だとWhitney trickが「微妙に」失敗する
高次元(n ≥ 5)では、交点数0の2つの部分多様体を isotopy で離して交わらなくできる(Whitney trickが完璧に効く)。
→ これのおかげで「手術理論」が非常に強力に働き、滑らかな構造はほぼ一意に決まる
→ exotic Rn は存在しない低次元(n ≤ 3)ではそもそも「自由度が少なすぎて」exoticな構造を作る余地がない(特にRnは剛性が高い)
→ 4次元だけがちょうど中途半端で、Whitney trickが「codimension 2で自己交点を持つ」せいで部分的にしか効かない

2.Freedman(位相的)とDonaldson(滑らか)のギャップが4次元で最大になる
Freedman(1982):4次元位相多様体は手術理論がほぼ完璧に動き、h-コボルディズム・Poincaré予想などが解決
Donaldson(1983〜):滑らかな4次元多様体はヤン・ミルズ理論・自己双対接続で非常に強い不変量が定義でき、同一視が極端に厳しくなる
この「位相的には同じでも滑らかさでは全然違う」というギャップが、4次元で爆発的に現れる
→ これを利用してexotic R⁴が無限個(実際には連続体個=2^ℵ₀個)作れる

3.他の次元ではこのギャップが起きない

次元
Rnの微分構造の数
主な理由

≤3
1個だけ
自由度が少なすぎ・剛性が高い

4
連続体個(uncountably many)
Freedman + Donaldsonのギャップが最大

≥5
1個だけ
Whitney trickが完璧 + 手術理論が強い

つまり4次元は
「高次元すぎて手術が効きすぎず、低次元すぎて面白みがなさすぎない」
という、数学的に非常に不幸(あるいは幸運?)な位置にある唯一の次元なのです。