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物理学者が解き明かす、いずれ終末を迎える宇宙で私たちが生きる意味
5/29(月) 現代ビジネス

 「なぜこの宇宙は存在するのか?」という究極の問いを超ひも理論で解き明かそうとした世界的ベストセラー『エレガントな宇宙』。サイエンス好きなら書名を覚えている人も多いだろう。その著者でもあり、理論物理学者でもあるブライアン・グリーンの『時間の終わりまで』が新書化された。

 なぜ物質が生まれ、生命が誕生し、私たちが存在するのか。膨張を続ける「進化する宇宙」は、私たちをどこへ連れてゆくのか。時間の始まりであるビッグバンから、時間の終わりである宇宙の終焉までを壮大なスケールで描き出し、このもっとも根源的な問いに答えていく第一級のポピュラーサイエンス、その冒頭部分を紹介する。

 *本記事は、『時間の終わりまで――物質、生命、心と進化する宇宙』(ブライアン・グリーン 著・青木薫 訳)から再構成してお届けします。

宇宙の法則は数学の言葉でできている?

 「僕が数学をやるのは、いったん定理を証明してしまえば、その定理は二度と揺るがないからだ。永遠にね」。シンプルでズバリ核心を突いたその言葉に、私はハッとした。当時私は大学の二年生で、心理学の課題として、人間の動機というテーマでレポートを書いていた。そのことを、長年にわたり数学のさまざまな分野について教えてもらっていた年上の友人に話したのだった。彼のその返答は、私を一変させた。

 私はそれまで、数学のことを多少なりともそんなふうに考えたことはなかった。私にとって数学とは、平方根や、ゼロによる割り算といったトピックを面白がる奇妙なコミュニティーで行われる、抽象的な正確さを競う不思議なゲームだった。ところが、彼の言葉を聞いたとたん、歯車のようなものがカチリと噛み合った。「そうか、それが数学のすごさなんだ」と私は思った。

つづく