>>606
つづき

この方法で得られた函数は、注目すべきことに、ウェイト 2 でレベル N のカスプ形式であり、(モジュラ形式でもあるので)ヘッケ作用素の固有ベクトルとなっている。これがハッセ・ヴェイユ予想(Hasse?Weil conjecture)であり、モジュラリティ定理より従うこととなる。

逆に、ウェイト 2 のモジュラ形式は、楕円曲線の正則微分(英語版)(holomorphic differential)に対応する。モジュラ曲線のヤコビ多様体は、同種を同一視すると、ウェイト 2 のヘッケ固有形式に対応する既約アーベル多様体の積として書くことができる。1-次元要素は楕円曲線である。(高次元要素も存在し、すべてではないが、ヘッケ固有形式が有理楕円曲線へ対応する。)曲線は、対応するカスプ形式より得られるので、この方法で構成された曲線は、元々の曲線と同種である(一般には同型にはならない)。

モジュラーな楕円曲線
以下のような手続きで X_0(N)から作られる楕円曲線 Eのことをモジュラーな楕円曲線と呼ぶ。

ヤコビアン
モジュラーな楕円曲線の説明のためには、まずリーマン面のヤコビアン(Jacobian、ヤコビ多様体(Jacobian variety)とも言う。)の定義から始める必要がある。
リーマン面 X}X のヤコビアン Jac(X)を以下のように定義する。

モジュラー曲線を直接扱わずヤコビアンを扱うことには以下のような理由があることを留意すべきである。1つは、モジュラー曲線にカスプを加えてコンパクト化したリーマン面は一般に種数 g\geq 0}g\geq 0 であり、 g>1}g>1 の場合、群構造を持たなくなるのに対して、ヤコビアンの方はその場合でも群構造を持っているので扱いやすい点[7]と、もう1つはモジュラー曲線をヤコビアンに埋め込むことができる[5]点である。

つづく