>>953

先史時代の人類集団の行動を理解するためには,その集団がどのような生業活動を営ん でいたかを理解することが必要不可欠である。
通常の先史時代集団では,食料資源の確保 がその中心的な位置を占める。しかし,実際に発掘される遺構や遺物から,先史時代の食 生活を正確に復元することは必ずしも容易ではない。
なぜならば,貝塚などの遺跡から出 土する遺物の多くは先史時代人の廃棄物であり,実際に消費された食品は遺物となりにく いからである。
特に,骨遺存体として発掘される動物資源に対して,多くが腐食してしま う植物資源の量的な評価は,従来の考古学的手法では困難である。
一方,動植物遺存体よ
りも直接的な証拠である食物残渣の分析(例えば土器や石器に付着した脂質の分析等)あ
るいは糞石の研究からは具体的な食事の内容を同定することが可能である。
しかし,それ
らの食品が一年を通した食生活の中でどの程度の重要性をもっていたのか,あるいは季節
的な変化があったのかどうか,それらを知ることはできない。