なにはともあれ。
私は女神官や女聖戦士と共に魔王を倒しに行きたい、一刻も早く。
ラストシーンはもう決めてある。

魔王との死闘の末にいよいよ勇者たちは力尽きてしまう。
あまりにも魔王の力は強大すぎたのだ、絶体絶命である。
でもここで勇者は、己の命と引き換えに神の光であらゆる闇を焼き尽くすという禁じられた魔法の詠唱を開始する。
これは超上位魔法であるからこの詠唱には時間が5分ばかしかかるのだ。
女神官はそれを止めさせようと勇者に駆け寄るがそれを女聖戦士は止める。
詠唱が始まったらもう後戻りはできない、それを皆は知っている。
美少女の精霊使いが最後の力を振り絞り勇者を守るための壁となる聖獣を展開し、ハイエルフの狙撃手は残っていた全ての矢を射掛け段幕を張る。
『神官ちゃん!任せたよ!』
勇者の詠唱を止めようと死に物狂いで迫ってくる巨大な異形と化した魔王に向かって女聖戦士が雄叫びをあげながら突撃をかける。

でもね。
超上位魔法を最後まで詠唱するだけの力はもう勇者には残っていなかった。
もう立っていることすらできなかったのだ。
けれども勇者は立っていた、子供のように泣きじゃくる女神官がそれを支えていたから。

勇者にとって彼女は始まりの街で最初に出来た仲間である。
なぜ勇者は魔王討伐を目指したのか?
それは彼女のその笑顔を守るため。
それなのに彼女は泣いている。

何が正解だったのか、もっと別の道があったのではないか、いや、全ては私の我が儘だったのではないか、本当は……。
……ああ、まだ気持ちも伝えてなかったな……。

詠唱と同化し薄れゆく意識の中で、ふと、勇者の意識が一瞬だけ戻る瞬間があった。
それは詠唱が終わったそのときで。
勇者の唇に女神官の唇が合わさっていた。

そして、まるで祝福するような煌めく優しい光が全てを──。