古新聞だが 再掲する
https://wired.jp/special/2016/shinichi-mochizuki/
Kevin Hartnett For Quanta Magazine
Gottingham Science 2016.07.06
「異世界からきた」論文を巡って: 望月新一による「ABC予想」の証明と、数学界の戦い
2012年、数学界に激震が走った。30年近くだれも解けなかった「ABC予想」を京都大学教授の望月新一が証明したというのだ。ただ、その証拠である論文は「異世界からきた」と思われるほど難解で、誰にも理解できなかった…。それから、3年の時を経て、数学界最大の謎に立ち向かうべくイギリスでカンファレンスが昨年開かれた。そこで一体何が起きたのか。2017年7月下旬から再度京都で開かれるカンファレンスに備え、レポートを緊急掲載。[15年12月21日のQuanta Magazine掲載の記事を翻訳・転載]

カンファレンス3日目の最後の発表と4日目の冒頭で、カリフォルニア大学サンディエゴ校の数論学者キラン・ケドラヤが望月教授がABC予想の証明にこのフロベニオイドをどのように用いようとしているかを説明した。彼のレクチャーにより、望月教授の手法において何が中核を成しているかが明らかにされ、それまでの時点で最も意義深い進展となった。望月教授の博士論文の指導教官であったファルティングスは、ケドラヤの講演が「インスパイアされるものだった」とメールに記している。

「ケドラヤの講演は、そのカンファレンスにおける重要なポイントでした」と出席したスタンフォード大学の数論学者のブライアン・コンラッドは語る。「その日たくさんの人に連絡しました。こんなテーマがケドラヤの講演で話されたから、明日とても興味深いことがわかるだろうってね」。ただ、結局は、そううまく事は運ばなかった。

困惑という希望

「最後まで理解できるという僅かな望みもあったとは思います。ただ、あの部分は原論がより難解になっています。だから、わたしの後に担当した発表者に責任がある訳ではないのです」とケドラヤは語った。

最後の講演が失敗に終わった背景の一部には「文化の違い」もあった、とキムは考えている。説明を担当した山下と星は、2人とも日本人だ。「日本では、数学者がプレゼンテーションを行う場合、用語の定義を絶えず続ける傾向がある。文化的違いが現れたのです」とキムは言う。「忍耐力と集中力が必要とされる、内容が濃く詰まったスライドが、日本では受け入れられるのです。一方、アメリカの場合は弁証的で双方向なスタイルが好まれます」

このカンファレンスを通して、一部の人が実際に期待していたような明白な結果が得られなかった一方で、理解への一歩という点では、前進があった。ケドラヤはカンファレンスの後により多くの知識をもつ人と連携する意欲がわき、今年7月京都大学で行われる次のカンファレンスに参加する予定だという。

「この僅かな前進でも悲観してはいないんです」とケドラヤは言う。「もっと期待はしていましたが、少なくとももう一度カンファレンスを開催し、さらに先へ進むことができるかを確認する価値があると思っています」

「このカンファレンスに先立ち、ほとんどの参加者が論文に書かれた望月教授の試みに関して予備知識が足りなかったようです」とキムは言う