>>317
つづき

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例 3 (問題が起こる場合).Z の部分群 mZ を用いた類別 Z/mZ の代わりに,
3 次対称群 S3 = {(1),(1 2),(1 3),(2 3),(1 2 3),(1 3 2)} の部分群 H = {(1),(1 2)} を用いた類別
S3 = (1)H ∪ (1 3)H ∪ (2 3)H
= {(1),(1 2)} ∪ {(1 3),(1 2 3)} ∪ {(2 3),(1 3 2)}
= (1 2)H ∪ (1 2 3)H ∪ (1 3 2)H
を考えてみる.このとき,3 つの元からなる集合 S3 /〜 = {(1)H,(1 3)H,(2 3)H} に対して,積 * を
(aH) * (bH) := (a ◯ b)H
と定義する.すなわち,代表元 a,b の積 a ◯ b = c の属する cH を積 (aH) * (bH) として定める.し
かし,これでは積は (うまく) 定義されていない.なぜなら,
(1 3)H * (2 3)H = (1 3)(2 3)H = (1 3 2)H = (2 3)H
であるが,別の代表元を取れば,
(1 3)H * (2 3)H = (1 2 3)H * (2 3)H = (1 2 3)(2 3)H = (1 2)H = (1)H
となり,積 (1 3)H * (2 3)H の結果が,代表元の選び方によって変わってしまうからである.

つづく