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つづき

以下で扱う座標束やファイバー束の場合、任意の x ∈ B に対し Fx は x によらず位相空間 F と同相になる。すなわち、x, y ∈ B に対して、Fx と Fy は同相である。しかし、一般の束では、そのような関係は無い。例えば楕円曲面などでは、ほとんどのファイバー(非特異ファイバー)とは異なる特異ファイバーと呼ばれるファイバーがある。

座標束
ここでは、座標束 {E, π, B, F, G, Ua, φa}a∈A を定義する。添字集合などを省略して (E, π, B, F, G, Ua, φa) などとも書く。
束 (E, π, B) と位相空間 F, F の効果的な位相変換群 G, 底空間 B の開被覆 {Ua}a∈A が与えられているとする。Ua を、座標近傍 (coordinate neighborhood) という。各座標近傍 Ua には同相写像
φa: Ua × F → π-1(Ua)
が存在し、任意の x ∈ Ua および f ∈ F に対して
π ◯ φa(x, f) = x
を満たす。
この φa という同相写像によって Ua × F と π-1(Ua) はしばしば同一視される。座標束を説明する図を描くときも Ua × F という直積の図を π-1(Ua) とみなして説明することも少なくない。φa-1 を局所自明化という。
G は位相変換群としてできるだけ要素の少ない小さいものをとるとする。
このような性質を持つ (E, π, B, G, {Ua, φa}a∈A) という組を座標束 (coordinate bundle) といい、F をファイバー、G を構造群 (structure group)、E を全空間、π を射影、B を底空間、φa を、座標関数 (coordinate function)、gba を座標変換 (coordinate transformation) という。
一般の束と違って、ファイバーは点に依らない位相空間である。正確には、任意の x ∈ B に対し x 上のファイバー Fx が、ファイバー F と同相となっている。そして各点での座標変換が、構造群という代数的な構造によって決まっているという点も重要である。

つづく