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つづき

米調査会社トラクティカによると、感情分析の市場規模は2025年に4100億円と18年の20倍に膨らむ見通し。あらゆる職場でキカイの理解者が活躍し始めたが、同時に私たち人間にも大きな変化を迫る。

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ネット広告のセプテーニ・ホールディングスは、採用活動で人工知能(AI)の判断を優先する。学生の考え方や経験を聞くアンケート、初期選考の結果など約100項目から入社後の「活躍可能性」が算出される。

10年分の人事評価データに基づく予測の的中率は8割。新卒採用の100人中、2割はネット面接のみで合否が決まり、4月の入社式で初めて会社に来る人もいる。

経験や勘に基づいた人の判断は曖昧だ。そんな不満が、データ分析で個々の未来を予測する技術を発展させた。担当の江崎修平さんは「AIに任せる仕事が増えた分、人に求められる能力もどんどん変わっている」と気を引き締める。

本来、感情や行動は一人ひとりが生み出すものだ。テクノロジーはそれらをデータの形でくみ取り、企業活動をより良くする原動力に変えていく。個人も企業も双方が利益を享受できるならいいが、時に個人の尊厳や自由も束縛しかねない。

「上司にのぞき込まれているようで不気味だった」。米オークランドのシステムエンジニア、アダム・フロリンさんは振り返る。18年までフリーランスで働いていたが、そこで使われていたのが遠隔監視システムだ。

マウスの動きやキーボードのタッチ数は常時計測される。10分間に1回はシャッター音とともにパソコン画面も撮られるため、何を表示させるか気をもむ必要があった。「見られすぎて逆に集中して働けなかった」。自由になるため、今は企業に所属して働く。

米ハーバード大学のイーサン・バーンスタイン准教授は「過度な監視は逆効果だ」と指摘する。中国の携帯工場の協力を得て実験したところ、上司が常に監視できる生産ラインはそうでないラインに比べ生産性が10〜15%落ちたという。

つづく