食器用スポンジ?そっくりの生き物がすい臓がん治療薬に?アラスカ 2017年08月19日 06時30分@ハザードラボ
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/2/1/21486.html

アラスカ近海の極寒の海の底に生きる、食器用スポンジにしか見えないナゾの深海生物が、がん細胞を退治するスゴイ治療薬になるかもしれないとして、
現在、米国で研究が進められている。

台所に転がっているようなスポンジにしか見えないこの生き物は、「Latrunculia austini(ラトランクリア・オースティーニ)」という立派な学名がある海綿動物。

2005年にアラスカの水産資源を調査する目的で海底探査を行なっていた米海洋大気庁(NOAA)の潜水艦が見つけたゴルフボールほどの生き物だが、
その内側には大きな可能性を秘めている。

ニュージーランド国立水・大気研究所の海綿生物の専門家、ミッシェル・ケリーさんがこの生物を詳しく調べた結果、熱帯や遠浅の海に生息する海綿動物には
ない一風変わった分子構造をしていることを発見。

すぐに米サウスカロライナ医科大学で海洋生物と医学の可能性を研究しているマーク・ハマーン氏とNOAAとともに研究を開始。

その結果、この動物から抽出した成分にすい臓がんの細胞株をうえつけたところ、がん細胞の増殖を抑制する能力があることが明らかになった。

緑のスポンジすべてに抗がん活性があるわけではなく、実験室では、平均して100個のうち1個未満からしか見つかっていないという。

それでも消化器系のがんのなかでも5年後の生存率が低く、有効な抗がん剤が見つかっていないすい臓がんの治療には希望につながるとして、この研究の
行方には各方面から熱い期待が寄せられている。

研究の壁になるのは、緑のスポンジが水深200メートル以上の極寒の海の底に生息している点だ。しかも海底の岩にがっちりとへばりついており、たった1キロ分を
採集するのに最低でも80時間はかかるという。そこでハワイ大学の研究チームは今、天然の緑のスポンジから取り出した抽出物をもとに、その分子構造を化学的に
合成しようと挑戦を続けている。

一般的な抗がん剤の多くに植物から抽出した天然成分が使われている。海のスポンジが抗がん剤になる日も決して遠くないはずだ。

http://www.hazardlab.jp/contents/post_info/2/1/4/21486/GreenSpongeCollecting_still.jpg
アラスカの深海で見つかった緑のスポンジ状の生物(NOAA Fisheries)