AdipoRのこの一連の研究に関して一番気になる点(若い人に教育的に伝えたい点)は、スクリーニングに使った系をAdipoRのシングルクローンで利用していないこと
せいぜい数万から数千分の1しかアタリが含まれていなかったであろうライブラリーからのスクリーニングで動いた系が、シングルクローンで動かないということはまずあり得ない
感覚的なことを言えば、多少実験条件を変えても、実験が下手な初心者でも動くようなものであろう

Expression Cloningで遺伝子を獲ったこの系が上手くいくには、さまざまな幸運が必要
例えば、
・ライブラリーに目的遺伝子が目的通りに入っている
・目的遺伝子が細胞で発現する
この2つの条件だって選んだ実験系で満たされるかは最後までわからない
AdipoRの場合はダイレクトなポジコンもなかっただろうから、実験系が動いているのか不安で不安で仕方がなかったはず

なのに、2003年のNatureは、FACSでAdipoRが取れたら、FACSの系は忘れて次に行ってしまってる
この実験の仕方は異常
動くことがわかった新規実験系を手放すなんてことは、ありえない