まさかとは思いますが門前のあの痩せ狗にも、仏性が 有るのでしょうか?
わたきしには 絶対あの門前の痩せ狗には仏性は無い、と思います。
あの狗は 参拝客がやってきますと、周りにまとわりついてなにがしらのおこぼれにあずかっています。
あの品性堕落の痩せ狗ですから、仏性は無いと思っています、どうでしょうか。

山川草木国土悉有仏性
さんせんそうもくこくど しつう ぶっしょう

おまえさんは この事を しゅそ首座さんに おそえていただいたんだよね。

はい、

そうか、あの門前の痩せ狗には 仏性が有るよ。

はい、ありがとうございました<(_ _)>ペコリ

この新参(しんざん)の修行僧と お師家(しけ)様の問答(もんどう)を盗み見、盗み聞き していた古参(こさん)の修行僧、膝をポンッと打って狂喜します。

この古参の修行僧、無字の公案になかなか透りません。
問いの答えが分かったぞ、と勇んでお師家様の前に藪の奥から転がり出ます。

この古参の修行僧、初関がなかなか透りません。
先輩の僧、後輩の僧、が次々と初関を透ってゆきます。
本人は悩み続けていたのです、睡眠時間も少なく修行に打ち込むのと逆にむしろ自分自身責め立てていたのです。
それで 目をかけていただいているお師家様に喜んでいただこうと、小躍りして前に転がり出てきたのです。

門前の痩せ狗に仏性はございますか、と問います。
これを受けてお師家様が答えます、無。
古参の修行僧、疑義(ぎぎ)す。
すかさず 『許す 30棒』、と激しく打ちます。
これは骨を砕く打ち方です。
あいまいに打っては成仏しません。
仏が仏を打つのですから、打つ手が痛む。

この時打たれながら下から上を見上げます。
眼に涙がうっすらとにじんでいるのを観ます。
古参の修行僧も痛さの為ばかりではなく、有り難さで涙が出ます。
その