●一家の食費よりもネコ代はかかっていたが・・・

猫のエサ代とトイレの砂代は、合わせて月6万円くらい。一家の食費よりもかかっていたが、頭数のわりにトイレは2つと少ない。
だから、家全体がトイレとなったのだ。A子さんの夫は「猫のことは、家内にすべてまかせていた」
「猫が死のうがどうも思わない。手術しようとも思わなかった。動物は共食いをするものだ。どうとも思わない」
と強気の口調だったが、立ち去り際に「(猫を飼うのは)もうコリゴリ。二度とゴメンだ」とぼやいた。

実は、一家の引越しには、夫の事業がうまくいかなくなったという背景がある。自宅を売り払うことになり、
次のアパートはペット禁止のため、「にゃいるどはーと」に助けをもとめたというわけだ。
業者がやってくるまでの約1時間半、放し飼いの猫たちはパニックになって家の中を逃げたが、
東江さんたちは一匹一匹、慎重にネットと素手でつかまえて、ゲージに入れていった。

●「子どもがかわいがっていた猫を連れていけなかった」

こうした多頭飼育崩壊は、表面化している事例も少なくなくない。NHK「クローズアップ現代+」(2016年11月)によると、
多頭飼育について全国で年約1800件の苦情があるという。そして、今回のように、猫たちによる「共食い」まで起きるような、
劣悪な環境を強いられてしまうケースも存在する。だが、行政やNPOにも限界はある。

次のアパートでは、屋外でのエサやりも禁止されている。A子さんは最後に「子どもがかわいがっていた猫を連れていけなかった」と涙をこぼした。
二度と飼えることはないかもしれないが、もし猫を飼える家に戻ることができたら、やり直したいということか。
だが、夫の事業の失敗がなければ、今回の救出にもつながらなかっただろう。それでも、東江さんは「流した涙にウソはないと信じたい」という。

たしかに猫はかわいい。しかし、正しい知識を持たないまま、増やしてしまうと、飼い主の生活も崩壊させてしまう。
東江さんは「猫たちの行く末を最後の最後に案じてくれたのは、せめてもの救いだった」と話す。
野に放たれるという最悪の事態は避けられたからだ。いったん引き取られた24匹はこのあと避妊・去勢手術を受けて、
新しい里親をさがすことになる。


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