まだごく一部でしか報道されていないのだと思うが、サウジアラビア政府は、メッカにあるイスラム教の
預言者ムハンマドの生家を破壊することを決定したようだ。その理由は、アブドッラー国王の宮殿を
建てるためだというのだから、世界中のムスリムから反発が起こる可能性があるのではないか。

この預言者ムハンマドの生家とは、彼が生まれた西暦570年頃にはあったのであろうから、既に1500年
以上の歳月が過ぎていることになる。イスラム歴史遺産調査財団のイルファン・アラウイ氏は、預言者
ムハンマドの生家は破壊され、完全に忘れ去られようとしている。そしてその場所は、コンクリートと
大理石で覆われてしまおう。と語っている。

これまでもサウジアラビア政府は、厳格なワハビー派であることから、預言者ムハンマドにまつわる
多くの史跡や品々を破壊してきていた。オスマン帝国がメッカを管理していた時代に、ムハンマドに
まつわる品々などが持ち出され、その一部がイスタンブールのトプカプ宮殿に陳列されているが、
もし、オスマン帝国が持ち出していなかったら、その陳列物のほとんどが破壊され、砂にうずもれ
失われていたものと思われる。

今回の預言者ムハンマドの生家の破壊は、ワハビー派の原則からではなく、あくまでもアブドッラー
国王の宮殿を建てるためであろうから、批判は相当出てくるのではないのか?それがあまり聞こえて
こないとすれば、あくまでもサウジアラビアの金と石油に、世界のムスリムたちの腰が引けてであろう。

メッカのカーバ神殿の周りの光景が、アメリカのゲーム・マシンと似通った光景になっていることに
気がついて、がっかりしたことがあるし、メジナの預言者モスクも、大理石を張り詰めた豪華なもの
ではあるが、何処か荘厳さを感じさせないものになっている。

大きさと豪華さだけで聖地を改造していったり、ワハビー派の原理原則だけで物事を進めては、
多分に世界のムスリムの反発を買おう。そのようなサウジアラビア政府の決定は、結果的に他の
原理主義を覚醒させることになる危険性があるのではないのか。