>>107続き
 ザトウクジラが、シャチに襲われていた2匹のマンボウを助けようとした事例も1件ある。

 ひょっとすると、個々のクジラの性格が影響しているのかもしれない。シュルマン=ジェニガー氏は、すべてのザトウクジラがシャチの狩りを妨害するわけではなく、そのような行動をとるザトウクジラの多くは体に傷があると言う。
おそらく、子供のころにシャチに攻撃された傷だろう。つまり、かつて攻撃されたことがある敵に反応して狩りを妨害しているとも考えられる。

 さらに研究では、攻撃されている動物ではなく、シャチの鳴き声に反応している可能性もあげられている。この場合、ザトウクジラは実際に戦いが行われている場所にやってくるまで、攻撃されている動物が何であるかわからないことになる。

 このような行動がザトウクジラ全体に定着しているのは、これによってザトウクジラがメリットを得ているからかもしれない。その場合は、おそらく他の種のために費やした多くの時間に見合う十分なメリットがあるはずだ。
(参考記事:「ネズミの恩返し行動を発見、人間以外で初」)

一人はみんなのために、みんなは一人のために?

 博愛主義を持ち出してさらに話をややこしくするクジラの専門家もいる。

「この行動はとても興味深いものですが、クジラが別の種を助けようとするのは、さほど驚くようなことではないと思います」。
そう話すのは、クジラの知能を研究する専門家であり、ホエール・サンクチュアリ・プロジェクトの代表でもあるローリ・マリーノ氏だ。