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最初の発見者はアマチュア化石収集家だった

 タリーモンスターという名前は、1955年にこの化石を発見した配管工のフランシス・タリー氏にちなんでつけられた。
タリー氏は、石炭紀後期の化石が大量に出土することで知られるイリノイ州のメゾンクリーク層で、炭鉱のぼた山の中からこの化石を発見した。

 タリー氏はアマチュア化石収集家だったが、こんな化石は見たことがなかった。
胴体から尾にかけてはシャベルのような形で、象の鼻のように長く伸びた吻の先にはワニのような口があり、胴体の前の上のほうからは両側に細い棒が突き出し、先端に目がついていた。
タリー氏は1987年のインタビューで、「本を調べても、そんな生物は載っていませんでした」と回想している。「博物館や化石同好会でも見たことがありませんでした。
そこでシカゴのフィールド自然史博物館に化石を持ち込んで、どんな生物なのか鑑定してもらおうとしたのです」
(参考記事:「40億年の生物進化が一目で! 「生命大躍進展」に行ってみた。」)

 フィールド自然史博物館の古生物学者たちもお手上げだった。その1人であるユージーン・リチャードソン氏は、1966年に「誰もこの動物を知らなかった」と記している。
種名や属名が分からないどころか「どの門の動物であるかも分からなかった。深刻で厄介な問題だった」という。

 1987年にタリー氏が死去した後、フィールド自然史博物館の研究者メアリー・カーマン氏とイリノイ州地質調査所の科学者らは、
タリーモンスターをイリノイ州の化石に指定するよう議会に働きかけた。
この法案をめぐって意外なほど大きな論争が起き、時間の無駄とまで言われたが、1989年にタリーモンスターは晴れてイリノイ州の化石になった。
今日では、イリノイ州を含む40州が「州の化石」を定めている。