聖夜。
初老の個人雲助は、住宅街にある小さな公園で休んでいた。
それぞれの家庭には灯りがつき、
窓越しからでも幸せに満ちた家族の様子が伺われた。
クリスマスツリー、プレゼント、ご馳走、美人な妻と可愛い子供達。

男がどんなに望んでも手に入れられなかった幸せがそこにあった。
すると、フロントガラスの前には、
優しかった、亡くなったはずの母親が微笑みながら立っていた。
「母ちゃん、、ごめんよ、、最後は雲助にまで落ちちゃったよ。
なんでこんな最低の人生だったかな、、」
母親は
「もとゆき、いいんだよ。母ちゃんは見ていたよ。お前が頑張って生きてきた事を。
法人時代は毎月13勤、ナイトになってからは26勤以上、有給は全く使わず今では禁止
されてる会社による、有給の買い取りをしてもらってたね。
個人雲助になっても土曜日曜はもちろん、お盆正月も休まず働いて、人に乞食と言われても
めげずに頑張ってたね。
もう頑張らなくていいんだよ。もうゆっくりお休み」

男は子供の頃のように、母親の腕に抱かれ、ゆっくり眠りについた。
「もうこれで、タクシーなんか運転しなくていいんだ、、、キチガイ客や小生意気なOLに罵られる事も無いんだ、、、」
翌朝、タクシーの中で凍死している初老の個雲男が見つかった。
顔には幸せに満ちた笑顔を残しながら。