死刑囚が落下してから最終的に心臓が停止するまでの「平均時間」は
およそ13〜15分。
痙攣がすでに収まった死刑囚の手首を医務官が取って脈をみる。
医務官が死刑囚の胸に聴診器を当てて時計を睨む。
首に深々とロープの食い込んだ死刑囚の身体を、刑務官も検事も息を
詰めて凝視する。
「心臓停止!」
医務官の一言が「絶命宣告」だった。だが、それでもあと5分はそのまま
の状態にしておかないといけない。
法の定めは、どこまでも冷酷に「確実な死」を求めている。
5分が経過すると刑務官たちが死刑囚の身体を降ろし、首のロープを
はずし、服を脱がせ、直ちに検視が始まる。
仰向け、横向き。うつ伏せ。医務官がチェックするのを検事が黙って目視する。
刑務官が死刑囚の身体をきれいに湯灌し、白装束を着せ、白木の寝棺に
収めるのも刑務官の役目。わずかばかりの花を棺の中に入れてやる。
これでようやくすべてが終わる。