>>64の続き

キリコの住む街では朝、昼、夜の計3回ゴミの収集が行われる。人口の多い街では間断なくゴミが
発生するため、1日1回の収集では追い付かないためだ。
キリコはダストボックスの中で息を殺していた。この日の昼は燃えるゴミの収集が行われるため、
当然、生ゴミの入ったゴミ袋も捨てられている。生ゴミの甘酸っぱくも血生臭い悪臭に耐えつつも、
キリコは聴覚を研ぎ澄まし、じっと「その時」を待っていた。10分、15分、いや、それ以上か。
悪臭漂うダストボックスの中に潜んでいた時間は、永遠にすら感じた。
遠くから、ディーゼルエンジンの音が聞こえてきた。そして、その音は機械を動かす音に変化し、
再びディーゼルエンジンの音に変化したかと思うと、その音はキリコに徐々に近づいてきた。
キリコはダストボックスのハッチをほんの少しだけ開けて、外の様子を伺った。
音の主はゴミ収集車だ。ゴミ収集車はマンションの敷地内に入り、ダストボックスに横付けした。
パーキングブレーキの乾いた音がした後、ゴミ収集車のドアが開き、作業員が降りてきた。
作業員は車体後部のゴミ収集機の起動ボタンを押し、ダストボックスのハッチを開けた。
開けた瞬間、作業員はいきなりキリコに殴られ気絶した。キリコは間髪入れずに運転手を引き摺り出し、
同じように殴って気絶させた。
そしてキリコはゴミ収集車を奪って走り去っていった。これこそがキリコのもう1つの狙いだった。