北欧の教育王国はなぜ崩壊したのか? スウェーデンの学力凋落の原因を探る

個性重視で知られる北欧諸国の教育環境が、急速に悪化している。
中でもスウェーデンの学力低下が深刻で、経済協力開発機構(OECD)が先日公表した2012年実施の国際学習到達度調査(PISA)では、
全3教科の得点がOECD平均を大きく下回った。
かつて教育先進国とも呼ばれたスウェーデンの教育はなぜ崩壊したのか、背景を探った。(川瀬弘至)

 ■日本とは55点差

 「北欧諸国の成績が急落した原因は?」

 「もう少し詳しいデータを出してほしい」

 昨年11月27日に文部科学省で行われたPISA結果発表のブリーフィング。
記者たちの質問が集中したのは、日本をはじめアジア勢の成績が上昇したことと、北欧諸国の成績が急落したことへの原因分析だった。

 PISAは、各国・地域の学校に通う15歳の男女を対象に「読解力」「数学的応用力」「科学的応用力」の3教科を評価する国際学力テストだ。
2000年から3年ごとに行われ、5回目の今回は65カ国・地域から約51万人が参加した。

 その結果発表で、北欧諸国の低迷が浮き彫りになった。
このうちスウェーデンの状況は、日本と比べてみると分かりやすい。
例えば2003年調査の読解力の得点は、国別順位8位のスウェーデンが14位の日本より16点も高かった。
しかし06年以降、脱ゆとり政策に取り組む日本が得点を上げる一方で、スウェーデンは急落。
09年調査で8位に上昇した日本に逆転され、今回の12年調査では55点も引き離された。

 この間、北欧諸国でトップを走っていたフィンランドも順位を下げ、日本に抜かされている。