依存症 ギャンブル1

1月中旬の午後7時過ぎ、北九州市にある公民館の一室で、ギャンブルやアルコー
ルなどの依存症患者らが週1度集う「北九州無限会」の例会が始まった。
「今日は年末年始のことを話してもらいましょう」。司会の男性(60)がそう切
り出した。匿名で参加する無限会では自分を「一心」と名乗っている。小説「大
地の子」(山崎豊子著)の主人公で、波乱の人生を送った陸一心からとった。パ
チンコがやめられずに借金を重ね、45歳の時、ギャンブル依存症と診断、3ヶ月
入院した。それから15年間一度も再発せずにきている。
一心さんがパチンコを始めたのは、山口県内の大学1年生の時だ。たまに遊んで、
2千円ほど勝てばうれしかった。卒業後は製薬会社に勤め、同僚の女性と結婚。ス
ポーツ用品店に転職した25歳ごろからパチンコが習慣づいてきた。給料が出た後、手元に一番金がある時期を中心に週1、2回通った。
30代になったある休日朝、2千円の元手で始めると大当たりとなり、その日の夕
方までに28万円を稼いだ。気持ちがカーッとのぼせた。妻や子にもそれぞれ5千
円の小遣いを与えた。「この金をもっと増やそう」。仕事の後や休日に通い詰めた。だが、もうけも3ヶ月後にはパチンコに消えた。
「よくパチンコに行くねえ」という程度だった妻も、あまりの金遣いの荒さに、
金を簡単に渡さなくなった。「くれんかったら、給料もらっても一銭もやらんぞ」と声を荒げたこともある。
金がもらえなくなると、地元の駅前にある大手消費者金融で金を借りた。最初は
ドキドキしながら店に入り、「10万円ほど借りたい」と伝えた。すると、「50万
円まで借りられます」と、店員が言う。言われるまま、限度額の50万円を借り、
その足で近くのパチンコ店へ入った。
負けを巻き返そう。意気込みとは裏腹に、1万円札はあっという間に消えた。「1
万円札が紙切れに見えた」。借金を繰り返し、月給20万円のうち、利息返済だ
けで月8万円を費やした。「大勝ちすれば一気に返せる」。ますますそう思うよ
うになっていた。