0015絶体絶命!ゾーンエンジェル
2016/06/10(金) 18:32:59.66ID:QfQybtU1ふとカバンの中にわずかな振動を察知した。
(・・・あらっ?ゾボット?)
携帯用通信機ゾボットが信号を発しているのである。
「ごめん、ちょっとトイレに行ってくるね」
蛍はゾボットを片手に教室を出ると、階段を駆け上がり、校舎の屋上に向かった。
期待どおり、そこには誰もいない。蛍はゾボットのスイッチを入れて通信を開始する。
「ランドスーピーよりミリファーへ。こちらゾーンエンジェル。応答願います」
「こちらミリファー」間髪置かず、父・陽一郎の声がゾボットから聞こえてきた。
「エンジェル、都内のB地区3243あたりで、数人の男たちの不穏な行動が確認された。
ガロガたちかもしれん。ただちに偵察に向かってくれ」
「了解。ただちに向かいます」蛍はゾボットのスイッチを切り、大きな声で派手なアクションをとる。
「ゾーン・ファイト・パワー!」
蛍の右手の指にはめられた指輪がまばゆい光を放ち、
蛍は瞬時に、ゾーンエンジェルの華麗な戦闘コスチュームを装着した。
「アストロ・ダッシュ!」
かけ声も勇ましく、大空に飛び立・・・とうとしたその時!
「こらあ〜!ソコでなにしてるんだっ!」
飛行ポーズをとった蛍は、その場で硬直した。「ええっ!?」
クチから心臓が飛び出すとはこのことだろうか。
誰もいないハズの校舎の屋上に一体だれが?
ピンクのマスクに包まれた蛍のクチの中が瞬時に渇き、ワキから大量のアセが流出した。
「もうすぐ授業が始まるというのにそんな格好でなにしてるんだ!?」
青い上下のジャージ姿のその青年は、校内でも厳格なことで有名な体育教師・山本だった。
彼は、生活指導の担当でもある。
「い、いや・・・わ・・・わ・・・わたしはその・・・この学校の生徒じゃ・・・」
蛍は、ゾーンエンジェルの姿のまま、ただおろおろと話し始める。
「ん?キミは確か・・・」
山本が蛍に近づいてきた。
(いや!先生!近づかないで!こんな格好はずかしい・・・)
「キミは確か1年の防人くんじゃないか」
(わあ、もうバレた!?どうして!?カンペキな武装なのに・・・)
「優等生のキミが、こんな時間にこんなところで何をしてるのかね?」
「・・・そ・・・それは・・・そのう・・・」
「だいたいその服装はなんだ!?校則違反じゃないか!?その妙なカタチのヘルメットはなにかね?」
幸か不幸か、山本は大きな勘違いをしてくれている。
こうなったら、なんとかピースランド星人である自分の正体を隠し通さねばならない。
「・・・あの・・・わたしおべんとうを忘れたんで、パンでも買いにいこうかと・・・」
ここは校舎の屋上である。かなり苦しい弁解だった。
「ウチの学校はバイクの使用は禁止だってこと知ってるだろうが!」
「いや、あの、じ・・・自転車で・・・わたし、これをかぶらないと自転車に乗れないんです・・・こわくて・・・」
「それじゃそのマスクはなにかね?」
「これはその・・・ちょっとカゼぎみで・・・ごほごほ」
「マスクなら普通のガーゼマスクでいいだろう!そして、そのハデな色のストッキングはなんだ!」
「こ、これは・・・」
「校則では黒またはベージュ以外は禁止しているハズだぞ!」
「いやその・・・たまには・・・こんな色もいいかなあって・・・」
「生徒の非行は服装の乱れから始まるんだ!ぼくといっしょに校長室に来たまえ!」
「ええっ?こんなかっこうで、ですか?」
「来なければ停学、場合によっては退学だ!このままだと内申書に影響するのは間違いないよ」
「そ、そんな・・・」
非行少女のレッテル!
内申書への影響!
停学処分!
ゾーンエンジェル、最大のピンチ!
はたして、どうなる?
(終)