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市川崑「映画女優」
 神保町にて。「銀幕の森光子」特集。87年、東宝。
初公開時以来の再見。当時見たときは、だめな映画と思ったが、今見ると、ややだめな映画に格上げ?と、なった。
 それは評価が上がったのかというと、新作映画を同時代に見るときは客観的にダメ映画はダメ映画としか、見ない。で、その映画がOLD映画となった今日、若干の懐かしさ、愛惜感があって、評価がゆるくなる傾向がある。
 つまり現役の仕事に対しては、完璧を求めがちだが、お年寄りに対しては敬老精神が働く?ということか。してみると、ダメ映画という評価は、変わっていないじゃん(笑)。
 吉永小百合という「大女優」も、変な女優さんで、実は代表作が、ない。強いてあげれば「キューポラのある町」くらいか。
 日活専属時代は、快活明朗なキャラで、ジャンル映画に、でまくった。しかし、裕次郎、旭、宍戸錠、いや赤木圭一郎でさえ、あまたの代表作があった。
女優でも、浅丘ルリ子、芦川いづみ、北原三枝、和泉雅子の、代表作は数多い。日活看板娘の中で、小百合のみが、代表作と呼べるものは、「キューポラ」一本。

 独立して、会社のあてがいぶちの作品に出演していたのから一転、作品を選べる立場になると、吉永のネームヴァリューでヒットはするが、なぜか、駄目な作品出来の悪い作品ばかりを、選びに選んで出演していく。
 山本薩夫「ああ野麦峠」の大竹しのぶの役は、最初は吉永にオファー。最初は乗り気だった吉永も、「(自分が歌う)主題歌のない映画」と知り、キャンセル。
日活の延長上の青春映画か、と思っていたという。まあ、このエピソード、出来すぎているので、誰かの作ったヨタかもしれない。
鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」の大谷直子の役も最初は吉永にオファー。脚本が、わけがわからないと、断る。
まあ、移動式仮設ドームでの上映という、映画のスケールがビンボーくさくて、いやだったのかもしれない。しかし出来た映画のスケールは、結果論的に、最大級のものになった「ツィゴイネルワイゼン」なのだが。