吉永小百合の「過去・現在・未来」(8)試写会場で聞こえたイビキ
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(略)「玄海つれづれ節」(86年・東映)、「華の乱」(88年・東映)の出来がよくない。前者は例えば、賭場で手の甲にドスを突き刺される演技が変だし、トリオで歌い踊る場面も稚拙、拙劣(演出の問題だが)。
後者に至っては、試写会場のどこかから、ガーガーとイビキが聞こえてきたのを覚えている。
 それでも私はまだ、「今後、何かあるんじゃないか」と期待しながら観た「霧の子午線」(96年・東映)。これがどうにもよくなかった。

 さらに、昔の恋人・渡哲也(76)と共演した「時雨の記」(98年・東映)、「長崎ぶらぶら節」(00年・東映)にも閉口。
 決定的だったのは、「千年の恋 ひかる源氏物語」(01年・東映)。思わず試写会場を途中退席してしまうほどだったからだ。
 小百合が仕事をセーブし、やがて復帰してからの「小百合らしくない」作品、演技を苦い思いで観ていた私だったが、コトここにきて、我慢も限界に達してしまった。
 私は「千年の恋──」について書き綴ったファックスを、小百合に送った。
〈途中で出てしまいました。あまりによくなくて〉
 すると小百合から同じくファックスで送られてきた返信には、
〈ほめてくださるまで、お会いしません〉
 と書かれてあったのだ。
中平まみ(作家)