どちらも、出来が良くない。特に、「動乱」は酷い。これがあの「ゼロファイター」や「首」、「八甲田山」といった面白い映画を撮った森谷司郎監督の映画か、と呆れた。

この二本の駄作、どちらも吉永小百合が出演している。
森谷司郎は、この後、「小説吉田学校」で――これも、吉永小百合が出ていたにも関わらず――やや持ち直すが、結局、「八甲田山」以上の作品を撮れずに亡くなる。

近年、吉永小百合主演映画を撮ることの多い山田洋次監督は、「小さいお家」という「男はつらいよ」シリーズ以外の作品では、最高傑作ではないか、という映画を撮っている。
が、新作「母と暮らせば」は、どうだろうか。

吉永小百合が「監督クラッシャー」となってしまう原因について、春日氏は、映画が吉永と「サユリスト」の「自己満足ショー」になるからだ、と分析している。

それに加えて、ある時期からは、吉永小百合が年を取りそこなったことが大きい、と思う。

阪本順司監督「北のカナリアたち」を観て、還暦すぎた吉永小百合が、30代半ばの小学校教師を演じていることに唖然とした。
夫の柴田恭兵、不倫相手の仲村トオル、どちらも吉永よりはるかに年下である。
「無理!」なのだ。その「無理!」を吉永は押し通す。それに付き合う監督は、ペースを崩し、その後の調子を落としていくのではなかろうか。

岸恵子は、市川崑監督「かあちゃん」に主演した際、実年齢相応のメークをしている。
「しわをだすことに恐怖を感じた」、という趣旨の発言を岸恵子がしていたのを覚えている。
「しわ」をだした女優は、それまでの作品にない、「老いの花」をみせていた。それは、「小さいお家」の倍賞千恵子も然り。

「母と暮らせば」にも、私は嫌な予感を持っている。
吉永小百合は、二宮和也の母親役である。ニノは、出征して亡くなった、という設定で、つまりは二十歳そこそこだろう。
ということは、吉永は、40代という設定ではないか。「無理!」である。山田洋次監督、大丈夫だろうか?

「つる―鶴―」を、ますます観たくなくなった。