あのよ、近所の中華屋でラーメンと焼き飯
食ってたらよ、高倉健が入って来たのよ。

店の中が静まりかえったな。
店主の中華鍋を叩く音しか聞こえなかった。

俺のテーブルをちらっと見て、“ラーメンと焼き飯”を
頼んだのよ。健さんが俺とおんなじメニューよ!

目が合って少し微笑んだな。
ええ⁉︎健さんが俺に微笑んだ。

夢見てるみたいで、自然に握手を求めたら、
しっかり握ってくれた。
店の中は健さんのオーラで客も店主も茫然と
してたな。
俺も夢を見てるようだった。

健さんには凄いオーラがあったな。

ラーメンを啜る健さんのこめかみが動いている
のを見て、同じ人間なんだと思ったな。

いい人も何も、あれは神様っだったな。

昭和47年8月の暑い日の出来事だった。