戦後の小津映画では、確かに「浮草」だけが異質。
唯一の大映作品で、カメラがさすがの小津も意見がいいにくい宮川一夫というせいもあるせいか、いつもの「小津調」とはかなり異なる画作り。

画面の構図だけでなく、豪雨の中での中村鴈治郎と京マチ子との口喧嘩や、川口浩と若尾文子のラブシーンなど、俳優がこれほど激しい文字通りの「演劇」をする作品は他にはない。

戦前の無声作品のリメイクだけに、他社のスタッフ・キャストを使う機会にいつもとは違うスタイルでやってみた結果なのかもしれない。
それでも、あれだけの作品に仕上がるのだから、やはり只者ではないと思う。

できれば、もう一作くらいこういうタイプの作品を見たかったが…