それ以降、李さんが頼りにしてこられるんです。半導体の開発にしても、
「佐々木さん、辞めてこっちへ来ませんか。韓国籍にならんか」とまで言う(笑)。
じゃあ、僕がシャープを説得するから、頭を下げて技術を教えてくださいと言ってくれ、と。(中略)

 そうなると欲が出る。「今度は液晶を教えてくれ」と言ってきた。僕は断った。「依頼心はサムスンを殺す」と。李さんは納得してくれたが、その部下になると、そうはいかない。盗んででもやるんだ。(中略)

 そのときも、私個人は、「与えられるものはどんどん与えて、感謝してくれればいい」と思っていた。少なくともシャープの味方にはなるだろうとね。
ところが、李さんがトップを離れた時期に、サムスンがシャープを相手に特許訴訟を起こしたんです。
あれはサムスンが情けなかった。 李さんは、シャープに感謝しとるからね。
李さんがトップに復帰した後、直接話をして、和解しました。

 これを 美談ととるか愚談と取るかは人それぞれでしょう。もちろんは私は後者ですよ。
こんなトップがシャープにいたんじゃ、開発者の努力は報われないし、結局、シャープはアメリカでのテレビのシェアをサムスンに奪われます。
サムスンは日本企業をつぶすために値下げを繰り返し、日本企業を売り場から完全排除したんです。

今回、シャープは台湾の企業に救われることになりましたが、シャープ生え抜きの経営幹部は生き残れないでしょうね。
少なくとも、特許管理を軽視するような経営幹部のいる会社は他社に食われるしか道はありません。台湾の鴻海(ホンハイ)もシャープの技術陣を尊重しても、経営幹部は時期を見て追放するんじゃないかな。

日本人 の美徳とされる「お人よし」は世界経済の中では美徳ではなく、ただの欠点でしかないようです。腹をすかしたハイエナのいる場所に、武器も持たずに出歩く人は「お人よし」とは呼べません。
シャープをつぶしたのは愚かな経営者でした。日本企業は「シャープの失敗」から教訓を学ぶべきです。 そうでなければハイエナのエサがまた増えるだけです。 By なでしこりん