ご挨拶 竹本幹夫(坪内博士記念演劇博物館館長)
 「不滅の俳優 池部良の世界」展を開催いたします。
 戦後の映画ファンで池部良の名を知らない人はないでしょう。
本展覧会の題名に冠した「不滅の俳優」とは、その主演映画『
不滅の熱球』(東宝1955年)にちなむ命名で、封切り当時、池部
良は、すでに堂々たるスターの座にありました。そして黄金
時代であった戦後の日本映画界にあって、常に花形俳優として
活躍したのでした。池部良は恋愛ものから仁侠映画に至るまでを
自在に演じた、幅広い芸域の持ち主であったばかりでなく、その
陰翳を含んだ奥深い演技は、三島由紀夫の絶賛を浴びるほどでした。
 また池部良はたんに名優であったばかりではありません。活躍は
とどまるところを知らず、50歳代を過ぎる頃よりは、新聞の
連載コラムなどの常連として、達意の名文は多くの読者を楽しませ
ました。
 今年は池部良氏が2010年10月8日に世を去られてから、三回忌に
当たります。このときにちなみ、不滅の俳優=池部良の足跡を、
皆様と共にたどりたいと思います。
 なお末筆ながら、数々の貴重な資料のご寄贈を頂きました池部良氏
ご後室、美子刀自に、謹んで御礼申し上げます。またあわせて故人の
ご冥福をお祈り申し上げます。