>>188
自分の置かれた状況を直視したからと解釈するのは自然だと思う。
 どん底にいる人間は「嘘でつっかえ棒」しなきゃ生きてゆけない人間ばかりだ。
つまり、今の自分が置かれた状況から目をそらしつつ生きているってことでもある。
しかし遍路(左ト全)から与えられた希望によって、逆に今自分が置かれた救いよう
のない現実に向き合わなくいけなくなった。その絶望的状況から咄嗟的に自殺してし
まったのだと思う。
 遍路はどこかに酒毒で侵された体を治してくれる寺があるという。もちろん役者も
それが情けからの嘘だろうということはわかってる。でも一方で、もしそんな寺が本当に
あったらという希望にすがりたいという思いもある。本当の底辺にいる人間、本当に絶望
的で救いようのない人間にとって、希望を抱くということがどれだけ危険なことか、という
ことではないかな。
 途中、ステ吉(三船)からも遍路は「死神」なんて言われていたから、最後の結末は十分
暗示されていた。

「どん底」は黒澤の中でも傑作の一つだと思う。黒澤作品の中であまり話題にならないのが
不思議なくらい。というか....、どう観たって傑作でしょww どこかの批評で評価点40と
あったけれどとても信じられない!!