仏印の甘美な記憶にすがる女と、復員して現実の風にあてられ
異国での楽園生活を過去の夢としてしまいこんでしまった男との、
感情のすれ違いドラマともいえる。

南国での甘い生活と厳しい冬の現実とのあまりも大きすぎる差異
に苦しむ二人は、温泉地に安息と死に場所を求めて彷徨うが死に
切れず離れられず、結局は日本の南の島に新天地を求めて旅立つが、
湿った空気と豪雨の地は、二人を暖かく迎えてくれることはなかった。

それは母国に帰ってきながらも異国の地の夢を捨てれなかった
甘すぎる考えの男女に下した母国日本の裁きだったように思える。