原作と映画とでは、作家と映画監督(脚本家も)との感性の違いによって、同じ素材でも表現の違いがあって当たり前だけど…
この映画と原作の違いを比較するのも面白いと思う。

原作では、信雄は喜一の母親に会った日から、その甘い匂いと、妖しげな魅力に惹かれる。
小説では信雄のこの想いがかなり重要なモチーフとなっている。
信雄はいつも喜一の母親の甘い妖しい匂いを思い出している。(勿論、性的なものでは無い )

その後、信雄は喜一の舟に何回か遊びに行くが、それは喜一と遊びたい、という思いよりも母親に会いたい、という想いの方が強い。

だから、たまたま見てしまった母親の夜の姿態に激しい衝撃を受ける。

信雄の父は新潟で友人と新しい商売を始める決心をし、食堂をやめて、一家で新潟に越す事になる。

新潟に出発する前日、喜一の舟が引かれて離れて行くのに気付き、必死に追いかけて行く。
そして、お化け鯉が舟を追いかけて行くのを目撃し、大声で喜一に 知らせる。
しかし、船からの返事は無く、舟は離れて行く…。

そして、信雄一家も明日はこの河を離れて新潟に引っ越してゆくのだ。

映画の中で不自然と思われる挿話、一家で女を見舞いに京都に行くシーンは原作には無い。
何故、この挿話を入れたのか意味不明。