>>272
もやもや感

1作目は鶴田が任侠的な物を全て背負って一人で滅びてゆく話だが、シリーズ全体では
佐分利信が全国制覇の野望を達成する為に、任侠的な部分を切り捨てて権力に執着する
政治劇と化している点が大きいかと。

佐倉役に佐分利を持ってきたことからわかる様に、この映画はそれまでの東映ヤクザ映画
とは性格が異なり「華麗なる一族」や「不毛地帯」のような権力闘争と政治腐敗を描く
方向に主眼が置かれている。

東映のやくざ映画ファンが山本薩夫の左翼系政治劇に興味を持つはずもなく、中島貞夫も
組長クラスの腹芸やその子供達の不幸な顛末などよりも「大阪電撃作戦」や「沖縄やくざ戦争」
で描いた、追いつめられるチンピラ達にしか興味が持てなかったと話している位で、岡田
社長の目指した日本版ゴッドファーザーとは程遠い仕上りになってしまったのも一因。

また、全国制覇の野望を目指す佐分利、佐分利の関東進出を阻止しようとする三船、両者を統合し
キングメーカーとして君臨しようとする千恵蔵御大、こうした図式はすでに深作が「日本暴力団
組長」で、関西(内田朝雄)、関東(河津清三郎)、右翼の黒幕(佐々木孝丸)として描いて
おり、東映では散々手垢の着いた題材だった上、目新しい部分が何もなく、無駄にキャストが
豪華で上映時間が長い分、観て損したような気分も比例して大きくなってしまうのが痛い。

佐分利は心臓の発作で寿命が尽き、最終的に三船に敗れる形になるも、三船は関西勢の関東進出を
食い止めるのだけが目的で、別に全国制覇を最初から目指しているようには描かれていないから、
どっちが勝ったとかいう話にならずに終わった感があるのもすっきりしない理由のひとつ。