お前らホンモノのスパイ見たことないだろ。
あれは1979年まだロシアがソ連と呼ばれていたころのことだった。
私は東京外大のロシア語専攻の学生だった。
ひょんなことから大使館主催のパーティーに行ったことがある。
いままで食べたことのない山海の珍味、スラブ系美人給仕。
そこに、ふと私たち学生の輪に入ってきた目つきのするどい
大使館員と名乗る男。
日本語はうまいし、「私は本を読まないから必要ないんだが」
といってみんなに1万円相当の図書券くれた。
私はとっさに断った。あの時受け取った二人はその後
ソ連に留学したと、風の便りに聞いたが、
いまだに消息は不明だ。
8年前ソ連の大統領になった男があのときの男だった。