世界のワクチン開発競争に日本が「負けた」理由
ttps://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/11/post-95015.php

 プラスミドに新型コロナの遺伝子情報を書き込んで開発したのが、アンジェスの「DNAワクチン」だ。「仮に米企業に量産化の
めどが立たなければ、日本への輸出を渋ったかもしれない。ワクチンを開発も輸入もできない国は、経済再開の道筋を見い
だせない。国の『生死』をワクチンが握る。それほどの戦略物資だ。そう繰り返しているが日本は政府も企業もなかなかピンと
きていない」

 記事は「国内勢も開発中だが実用化は海外勢より遅く量も乏しい見込み」という見立てを前提としていたが、私は何か釈然と
しなかった。日本の新型コロナの人口100万人当たりの死者数は13人程度。600人以上になる英国や米国、そして100人超の
ドイツと比べて抑えている。国民の自粛の苦しみがあってこそのことだった。
 ところが今度は、抑え込みに失敗した欧米の製剤を多額の税金で買わされる。なぜこうなったのか。日本に何が欠けている
のか、それを知ろうと取材を始めた――。

<モデルナの早期開発の陰に米軍事機関あり>

 インタビューを通じて、森下が歯ぎしりしていた相手は、米国だった。「軍が民間と一緒に積み上げてきたものがあって、
日本とは全然違う」

 「ワープ・スピード」を掲げるトランプ政権の支援は桁違いで、モデルナには保健福祉省の生物医学先端研究開発局(BARDA)
経由で9億5500万ドルの補助金を出し、1億回分を15億2500万ドルで買い取る契約を結んだ。ただ、ここまではコロナ禍が起きて
からの支援で、森下が言う「積み上げてきたもの」は別にある。
 8月下旬、ワシントン・ポストなどがモデルナについて興味深い情報を報じた。ワクチン開発で「ある機関」から2460万ドルの支援
を受けていながら、特許申請に際してその報告義務を怠ったという内容だ。ある機関とは、国防総省傘下の防衛先端技術研究
計画局(DARPA)。創業3年目の13年の段階で、mRNAワクチン等の開発でDARPAの補助を受けていた。
(続く)