市役所に転職して初めての冬がやってきた。
もう寒空の下をノルマに追われて走り回らなくていい、雨の中で客の玄関先でお願いセールスしなくていい。
そう考えるだけで、どんなに寒波が来ても、どんなに雨が降っても朝が憂鬱じゃない。素晴らしいことだ。
市役所には毎日困った人達が相談に来る。そういう人の役に立てる仕事をしている。
信用金庫職員だった頃、困って融資の相談に来た人にどれだけ役に立てただろう、どれだけ融資を断ってきただろう。彼らは今どうしてるかな。
公務員試験に合格した時、退職相談をした先輩や上司は公務員をひたすらに罵倒してきた。市役所なんてやりがいの無い仕事で税金泥棒だと。
彼らを町でたまに見かける。
ダウンを着込んで白い息を吐きながら死んだ目でカブでどこかへ走っていく。ああ、まだこんな仕事続けてたんだねって、心の中で応援してあげてる。
押し売り飛び込み営業、よく続けられるね。保険投信手数料、どこからお給料が出てるか考えたら罪悪感無いのかな。
そんなことやらされて地域貢献、法人税優遇、そんなことやってたら公務員を罵倒したくもなるよね、可哀想。
人事部は有給消化を頑なにさせてくれなかったけど、それはまぁいいや、信用金庫ってそういう所だしね。今の職場じゃ考えられないけど。